「レームダック」を報道や政治で使うべきではない理由

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【これは約 5 分の記事です】

2021年9月、菅義偉首相の自民党総裁選不出馬表明を受けて、報道や政治家が「レームダック」という言葉を使っています。

報道では「レームダック(死に体)」という表現を使っていますが、これは、読者にとって一般的な言葉ではないからでしょう。ですが、この表現を新聞で使うことに疑問を感じないでしょうか

  • ISOやJISなどで定義された用語でもなければ、資格試験のシラバスなどで知っておくべきと指定された用語でもない
  • 「死」という文字を避けたいという目的があったとして(死に体)などと表現する時点で目的にあっていない
  • ほとんどの場合、記事で1回しか使わておらず言い換えや説明として機能していない

と、わざわざ使う必要がない用語です。が、報道や政治で使うべきではないという理由は、他にもあります。

lame duck

「レームダック」はカタカナで書かれていますが、これは本来英語で「lame duck」と表記します。直訳すると

足の不自由な(lame)あひる(duck)

となります。

あひる
アヒル

辞書サイトから引用すると

lame duck(政治の)〔政権を担っているが、選挙で敗れて政権を離れることになる議員、知事、大統領、政党、政権などを指す。〕
lame duck〈米〉(大統領の)〔任期を残して次の選挙への不出馬を表明した大統領。〕

https://eow.alc.co.jp/search?q=%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%80%E3%83%83%E3%82%AF

です。

ここでイメージされているのは

足が動けないアヒルは政治に携わるような主体ではない

というイメージです。

もし、「足の不自由な人は政治にかかわるべきではない」という人がいたら、この記事をお読みの方はどう感じるでしょうか。「レームダック」とはそういう発想の用語なのです。

「レームダック」は差別用語になるか

足が不自由という障害を前提とした表現の「レームダック」ですが、この表現が差別用語になるかというと、それだけではならないでしょう。少なくともこの投稿時点(2021年9月10日)では、差別用語にはなりません。

「レームダック」という音声だけで、ほとんどの日本人は捉えている

からです。辞書サイトを調べれば元の使い方は掲載されていますが、そのような意味を知らずに音声だけで使っている方がほとんどでしょう。

ですが、「レームダックの本来の意味を話し手も読み手も知っている」としたらどうでしょう。用語としては差別用語ではないでしょうが、「足の不自由な主体は政治にかかわれない・かかわるべきではない」という発想が前提の表現だと知ったうえでの表現になります。

言葉そのものは差別用語ではありませんが、文脈上差別的な発想を前提としないと意味が通じない用語ではあります。

報道や政治で使うべきではない

一般の方がこの用語を単に音として認識して使うのは仕方がないでしょう。そこまで調べるべきとは思いません。

ですが、報道や政治の場で使うとすると話は別です。報道でこの用語を広めたいのであれば、その用語が本来どういう意味かを調べたうえで広める必要があるでしょう。

政治においても、この用語はもともとアメリカの政治の世界でのスラングなので、そのスラングが本来どういう意味を持っているか、そして、その本来の意味合いは消えているといえるかという観点から使うべきでしょう。

「英語で使われている格好いい表現を俺は知っているんだぜ」という発想で使っているのであれば、やめたほうがいいです。

「体が不自由でも政治に携われるアヒル」

「五体満足ではないあひるが政治に携わるべきではない」という発想での「レームダック」は、差別的な発想をもとにしているといえます。ですが、「体に支障なアヒルでも政治にかかわることができるのだ」という発想であればどうでしょう。

こういう発想での「レームダック」であれば歓迎すべきでしょう。もっとも既にネガティブな発想で「レームダック」という言葉が使われてきているので、今更発想を変えると過去の資料を読むときに混乱するとは思いますが。

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